【JavaScript】 関数オーバーロードを実装してみる
更新日:2020/06/09
JavaScriptはオーバーロードという機能を持っていません。
しかし先達たちは、様々な方法で疑似的なオーバーロードを実現しているようです。
そこで僕も、自分なりに疑似的なオーバーロードを実装してみます。
やりたいこと
引数の数と型が異なる同名の関数を複数定義して、それぞれ実行できるようにする。
オーバーロードの例
// 同名の関数を複数定義
const a = function( b ){ } // bは数値
const a = function( c ){ } // cはテキスト
const a = function( b , c ){ } // bは数値 cはテキスト
// 引数の数や型で実行する関数を使い分ける
a( "abc " ); // 2番目の関数aを実行
a( 10 , "abc " ); // 3番目の関数aを実行
作成したJavaScriptコード
const overload = ( ) => {
const funcs=[];
let name=null;
return ( f => {
f.add = ( argTypes , func ) => funcs.push(
{ length:argTypes.length ,
type : argTypes.map( e => e.trim().toUpperCase() ).join( "," ) ,
func : func }
);
f.setName = newName => name = newName;
return f;
})( function ( ...arg ){
let retVal = null;
const argType = arg.map( e => (typeof e).toUpperCase() ).join( "," );
if( funcs.every(
e => {
if( arg.length !== e.length ) return true;
if( e.type === argType ) {
retVal = e.func.apply( this , arg); return false;
}
return true;
}
) ) {
if( name !== null ) {
let parent = typeof Object.getPrototypeOf(this) === "object" ?
Object.getPrototypeOf(Object.getPrototypeOf(this)) : undefined;
if( typeof parent === "object" && typeof parent[name] === "function" ){
retVal = parent[name].apply( this , arg); return false;
}
}
throw new Error("overload:No matching function");
}
return retVal;
}
);
};
解説
overload関数を実行すると、無名関数function ( ...arg ){}がオブジェクト化されて、即時関数 ( f => {})()に引数として渡されます。
即時関数では、無名関数にadd()とsetName()というメソッドをセットして、無名関数をリターンしています。
このコードは、次のように書いた方がわかりやすいかもしれません。
const overloadfunc = function ( ...arg ){ ...省略 };
overloadfunc.add = ( argTypes , func ) =>funcs.push( ...省略 );
overloadfunc.setName = newName => name = newName;
return overloadfunc;
しかし、無名関数に名前を付けたくなかったので、このような形になっています。
オーバーロードする関数は、add()メソッドを使用して登録します。
add()の形式
const oFunc = overload();
oFunc.add( argTypes , func )
argTypesはオーバーロードする引数の型を順番に格納した配列です。
typeofで判定しているため、"number"や"boolean"、"string"、"function"、"object"等が指定できます。
funcは、呼び出される関数です。
add()メソッド内では、argTypesを大文字にして","で接続した文字列に変換しています。
setName()メソッドは、関数の名前をセットします。
クラスで継承元のメソッドを呼び出すときに使用します。
オーバーロード関数の呼び出しは、次のようにおこないます。
オーバーロード関数の呼び出し
const oFunc = overload();
oFunc.add( argTypes , func );
oFunc( 引数 );
このとき実行されるのは、overload関数内の無名関数function ( ...arg ){}です。
ここでは、typeofで与えられた引数の型を取得。
大文字に変換して","で接続しています。
この文字列と、add()メソッドで登録した文字列が同じなら、対応する関数を実行します。
一致する文字列がない場合は、setName()メソッドで関数名を登録している場合に限り、次の処理をおこなっています。
(1) thisがプロトタイプチェーンを持っているなら(2)へ
(2) プロトタイプチェーンの中に、さらにプロトタイプチェーンがあるなら(3)へ
(3) プロトタイプチェーンの中のプロトタイプチェーンから、setName()メソッドで登録した名前と同じ関数をたどれるなら、実行する。
これはClassで継承をおこなっているとき、親のメソッドを呼び出すケースを想定しています。
継承をおこなったclassオブジェクトは、つぎのようなイメージになっていて親classで定義したメソッドを直接呼び出しています。
object {
プロパティ
・・・
<prototype>{ // プロトタイプチェーン
classで定義したメソッド
・・・
<prototype>{ // プロトタイプチェーン
親classで定義したメソッド ←これを呼び出す
・・・
}
}
}
参考記事:【JavaScript】 クラスとは?正体についても調べてみた
参考記事:【JavaScript】 プロトタイプとは?prototypeプロパティはプロトタイプではない件について
使い方
overload()関数から返された関数オブジェクトの持っているadd()メソッドで、オーバーロードする関数を登録します。
登録が終わったら、関数オブジェクトを実行します。
const a1 = overload();
a1.add( ["text","number"] , function( ...arg ){ console.log( "f1" , arg )} );
a1.add( ["number","number"] , function( ...arg ){ console.log( "f2" , arg )} );
a1( "aaa" , "bbb" ); // "f1" , Array [ "aaa" , "bbb" ]
a1( 100 , "bbb" ); // "f2" , Array [ 100 , "bbb" ]
次はクラスで継承をおこない、オーバーロードを設定してみます。
class a {
abc(){
console.log( "parent class" );
}
}
class b extends a{
constructor() {
super();
}
}
b.prototype.abc = overload();
b.prototype.abc.setName("abc");
b.prototype.abc.add( ["number","string"],function( ...arg ){ console.log( "f1" , arg )} );
b.prototype.abc.add( ["number","number"],function( ...arg ){ console.log( "f2" , arg )} );
b.prototype.abc.add( ["boolean","number","string"],function( ...arg ){ console.log( "f3" , arg)} );
b.prototype.abc.add( ["boolean","number","string","object"],function( ...arg ){ console.log( "f4" , arg)} );
const c = new b();
c.abc( 1 , 2 ); // f2 Array [ 1, 2 ]
c.abc( Number(1) , "abc" ); // f1 Array [ 1, "abc" ]
c.abc( "xyz" , "abc" ); // parent class
c.abc( false , 100.2 , "あいうえお" ); // f3 Array [ false, 100.2, "あいうえお" ]
c.abc( false , 100.2 , "あいうえお" ,{x:10}); // f4 Array [ false, 100.2, "あいうえお", { x:10 } ]
残念ながら、class構文の中でオーバーロードをセットすることができませんでした。
class定義の段階では式を実行できないからです。
このコードの問題点
親classと子classで同名の関数をオーバーロードした状況で、引数と実行する関数が一致しない場合、無限ループします。
その他にも問題が盛りだくさん。
汎用的に使用するのは厳しいです…
更新日:2020/06/09
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